飲食店の77.8%が従業員育成の必要性を実感。うち約9割は「人手や時間が不充分」

  • 本調査について
■調査概要
調査対象:飲食店ドットコム会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:418名
調査期間:2022年9月12日~2022年9月15日
調査方法:インターネット調査

■回答者について
本調査にご協力いただいた回答者のうち69.6%が1店舗のみを運営しております。また、回答者のうち東京にある飲食店の割合は50.5%(首都圏の飲食店の割合は66.7%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測されます。
 
  • 調査結果について
従業員育成に充分なリソースを確保できている店舗はわずか12.6%

コロナ禍以前から、飲食業界では深刻な人手不足が続いています。こうした状況下では、新たな人材の確保に加え、従業員の育成について頭を悩ませている飲食店経営者や運営者も少なくありません。そこで今回は、飲食店における従業員育成の現状を調査するため、アンケートを実施しました。

アンケートではまず、飲食店の売上状況について伺いました。2022年8月と新型コロナの影響がなかった2019年8月の売上を比較してもらったところ、以前と売上が変わらない「100%」との回答は6.5%、売上が伸びたという「110%以上」の回答は8.4%にとどまりました。

一方で、79.6%の店舗が「90%以下」と回答。今年の8月は、全国的に感染者数が増加していたこともあり、コロナ禍前の売上に満たない飲食店が大多数となりました。また、売上が半分以下(「50%以下」)との回答も28.2%見られ、依然として厳しい状況に置かれている飲食店が多いことがわかります。

次に、直近3年間における従業員の定着率(=[入社した人数-退職した人数]÷入社した人数×100)を尋ねたところ、「95~100%(24.4%)」との回答が最多となり、「75%以上」が約5割を占める結果となりました。しかしながら、各回答に大きな偏りは見られず、店舗によってさまざまな事情があると推測されます。

続いて、今現在、従業員育成の必要性を感じているか尋ねたところ、最も多かったのは「感じている(47.4%)」との回答。「やや感じている(30.4%)」との回答と合わせると、77.8%が従業員の育成を「概ね必要」だと感じています。対して「必要性を感じていない」との回答は、22.2%でした。

さらに、従業員育成の必要性を「感じている」、「やや感じている」と回答した方に、従業員の育成に宛てられる人手や時間が充分か尋ねたところ、「充分である」との回答はわずか12.6%にとどまりました。一方、残りの約9割は「概ね不足している」(不足している=36.9%、やや不足し​ている=50.5%)と回答。この結果からは、8割近くの店舗が従業員育成の必要性を感じているものの、そのほとんどで充分な人手や時間を確保できていない現状が読み取れます。

従業員の育成、約7割の飲食店が既存社員やアルバイトによるOJTを実施

従業員の育成方法について尋ねたところ、最も多かったのは、「社員や既存の従業員(アルバイト・パート含む)によるOJT(73.8%)」との回答でした。次いで、「社員や既存の従業員(アルバイト・パート含む)によるロールプレイング(36.3%)」、「マニュアルを読んでもらう(28.0%)」が続く結果となり、複数の方法を組み合わせている店舗も見られました。

※OJTとは、店舗での実践を通じて業務を身につけさせること。ロールプレイングとは、疑似的なシチュエーションのなかで研修を行うことを指します

次に、従業員の育成を行う目的について尋ねたところ、「接客などサービス面の向上」との回答が78.2%で最多となりました。次いで、「業務の効率化、スピードアップ(67.7%)」、「新人の育成(43.7%)」、「従業員のモチベーション維持(43.7%)」と続きました。

従業員の育成を行うために導入した(または導入を検討している)ものについて尋ねたところ、半数近くが「導入した(または導入を検討している)ものはない(48.0%)」と回答。一方、導入した(または導入を検討している)もののなかで最も多かったのは、「社内コミュニケーションツール(19.1%)」でした。次に、評価基準のひとつとなる「お客様アンケート(17.5%)」、育成にかかるリソースを確保するための「注文・配膳・会計などにかかわる業務効率化ツール(17.2%)」と続きました。

また、従業員の育成において、人事評価の基準を明確にしているか尋ねた質問では、「必要だと感じているが、明確にできていない」との回答が最も多く、67.7%。「明確にしている」との回答は17.8%にとどまりました。この結果からは、多くの飲食店が人事評価基準の必要性を感じているものの、実施までは至っていない様子が見えてきます。

さらに、従業員育成にかける費用をどこから出しているか尋ねたところ、48.0%が「特に費用をかけていない」と回答。一方、お金をかけている店舗では、「人件費として確保している店舗資金(45.5%)」との回答が最も多く、各種助成金や融資金を使っている店舗はわずかでした。

人材不足や定着率の低さは課題。個性を活かした従業員育成をする店舗も

従業員の育成について課題に感じていることや工夫していることを尋ねたところ、さまざまな声が寄せられました。

■課題に感じていること
人材不足で、育成まで手が回らない
・社員教育を実施したいが、人員不足でそこまで手が回らない(北海道/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
・育成以前に、人材募集をしても、人が採用できない(東京都/フランス料理/2店舗)

従業員が定着しない
・辛抱強くコツコツゆっくり教えて育てるスピードと、途中で退職する割合があわない(大阪府/イタリア料理/2店舗)
・定着してくれないので、募集に経費をかけられない(大阪府/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

時間の経過とともに従業員の成長が止まる
・こちら側の教育が悪いのもあるかと思いますが、入社したときは一生懸命だが慣れるとすぐに怠慢になる傾向を課題に感じます(大阪府/ラーメン/3~5店舗)
・ある程度で成長が止まる。仲良しクラブになりがち(兵庫県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)

従業員によってオペレーションに差が出る
・全スタッフが行う一定のサービスが、スタッフにより差が生じる点(千葉県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
・なかなか統一オペレーションにならない(東京都/お弁当・惣菜・デリ/6~10店舗)

従業員との間にジェネレーションギャップがある
・若い方が多いので年齢差の考え方のギャップを埋められるか否か(大阪府/その他/1店舗)
・世代間の常識の違い。常に気を遣うこと(東京都/フランス料理/1店舗)


■工夫をしていること
従業員の個性を大切にした育成
・従業員それぞれの覚え方や修得時間の違いにより、それぞれの習得にかかる時間を調整している(大阪府/イタリア料理/1店舗)
・一人一人の個性を大事にし、その人に合った教育を行っている(神奈川県/洋食/1店舗)

勉強できる場を提供している
・調理担当を任せているので、積極的に勉強できるようにコストを負担している。具体的には他店視察、料理本、試飲会、新しい調理器具の導入など(東京都/バー/1店舗)
・私自身の経験を基に幅広く(経営学、経理、調理、接客コミュニケーション、人材育成などについて)、不定期で社内研修を実施している(東京都/カフェ/2店舗)

その他
・専門料理なので興味と知識が深まるような話題を仕事中の会話にするようにしている(東京都/専門料理/1店舗)
・意思疎通、コミュニケーションの難しさを感じており、伝えたあとに、伝わったかどうか確認をしている(神奈川県/カフェ/1店舗)
・営業時間内に問題があれば、遅くともその日のうちに具体的に是正するようにしている。その際、なぜそのようなことをしたのか、それは自身で正しいと思っての行いなのかを最初に聞くようにしている(大阪府/居酒屋・ダイニングバー/2店舗)

最後に、現在抱えている課題や悩みについて、幅広く尋ねたところ、以下のような声が寄せられました。

コロナ禍で客足が減少、回復しない
・コロナ前より一般的に夜の人出は減ったまま回復する気配は全くない。そして、いつになっても治まらないコロナウィルスに疲弊気味である(東京都/テイクアウト/2店舗)
・コロナ禍以降、お客様の入りが日によって激しく安定しない(千葉県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
・シンプルにお客様が少ない(東京都/居酒屋・ダイニングバー/2店舗)

原材料が高騰している
・食材費高騰による原価高騰も悩みです(静岡県/焼肉/2店舗)
・メニュー開発。原価高騰により難航している(山口県/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
・現在の多品目の値上げで(メニュー価格を上げざるを得ないため)客離れも懸念されます(東京都/その他/6~10店舗)

その他
・世代による働くことへの意識の変化。最低賃金の高騰でのコストカットと育成に時間をかけることのバランスの取り方(大阪府/そば・うどん/1店舗)
・スタッフの能力、モチベーション、仕事量の差が大きい。一部のスタッフはめちゃめちゃ頑張っているが、一部のスタッフは自分都合で自由(愛知県/その他/6~10店舗)
・従業員は雇用したいが、人件費に見合った売上の増加が期待しづらい現状があり、躊躇しています(大阪府/カフェ/1店舗)



調査結果の引用時のお願い
本調査結果の引用時には、以下のご対応をお願い申し上げます。
・クレジットに、「飲食店ドットコム(株式会社シンクロ・フード)調べ」と明記ください。
・WEB上で引用いただく際には、「飲食店リサーチ」(https://www.inshokuten.com/research/company/)へのリンク付与をお願いいたします。

<問い合わせ先>
飲食店リサーチについて
・URL:https://www.inshokuten.com/research/company/
「飲食店リサーチ」は、飲食店に特化したリサーチサービスです。飲食店出店者・運営者に対してアンケートを実施し、マーケティングデータを取得することが可能です。飲食店向けの新しい商品・サービスの企画や食品・飲料の研究・開発等の際に、ニーズの把握・データの裏付けといった様々な形で、マーケティングデータを活用いただけます。

飲食業界に向けたマーケティングなら
・URL:https://www.inshokuten.com/promotion/
<シンクロ・フードの直近の飲食店支援の取り組み>
シンクロ・フードでは新型コロナウイルスによる外食業界への影響を鑑み、飲食店の皆さまの店舗運営の一助となるべく新サービスの提供、キャンペーンの実施などを行っております。

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株式会社シンクロ・フードについて
当社は、”多様な飲食体験から生まれるしあわせを、日本中に、そして世界へと広げる”というビジョンのもと、飲食店経営・運営を支援するプラットフォーム「飲食店ドットコム」を運営しています。テクノロジーを最大限に活用し、飲食店の出店開業・運営に必要な「ヒト・モノ・情報・サービス」など多様な選択肢をシンプル・スピーディに提供していくことで、飲食業界の発展・関わる人のしあわせに貢献してまいります。
【本社】 東京都渋谷区恵比寿南一丁目7番8号 恵比寿サウスワン7階
【代表者】 代表取締役 藤代 真一
【上場市場】 東京証券取引所プライム市場
【URL】 http://www.synchro-food.co.jp/
【運営サイト】
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飲食業界専門の求人サイト「求人@飲食店ドットコム」(https://job.inshokuten.com/
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飲食店専門のM&Aサービス「飲食M&A」(https://www.inshokuten.com/ma/
居抜き店舗の買取査定サイト「居抜き情報.COM」(https://www.inuki-info.com/
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